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マンション改修工事第2回 [建築(マンション)]

マンション改修工事の第2回目ということで、今回は改修方法をどのように検討したかをレポートします。

そもそも1978年11月に完成したこのマンションは、杉浦敬彦設計連合が1975年に雑誌「ハウスプラン」で、コミュニティーハウスづくりを呼びかけ参加者集めと土地探しを開始したことがきっかけで造られたコーポラティブハウジングなのですが、建設当時は皆若く子育て真っ最中のような家族や仕事場として参加したひとや二世帯住宅も含まれていました。普通の分譲マンションとは違い各住戸の床面積や間取りも全てオーダーで、それぞれの予算やライフスタイルにあわせたものになっています。

建設過程では日照権紛争に巻き込まれ、裁判所の調停で反対住民と和解により設計変更を行なったりと決して順調ではありませんでしたが、14世帯全員が最後まで残り完成を迎えることができたという経緯があったお陰で、住民の結束力は固く、マンション管理も住民自らの手で行なうことはごく自然な流れでした。

第一回目の改修工事は1998年に杉浦敬彦設計連合が調査及び設計監理担当し、コンクリート打放しの上にパーマシールドという塗料を吹き付ける工法を採用しました。第一の理由は、決して奇麗とはいえない打放し仕上げでしたが住民の方が愛着を持っていて、その外観イメージを残したいということ。第二の理由は、コンクリートに浸透し防水層を造ることによって水の進入を防ぐという特徴から透明塗料のパーマシールドを採用することにしたようです。当時の私はすでに独立しておりそのときの改修工事には関与しませんでした。

第二回目の改修工事については2007年6月に着手し、2009年まで約2年かけて検討しました。私が検討会に加わったのが2009年1月で、それ以前に候補に挙がっていた改修業者はそれぞれ独自の工法を持っていて、細かい部分で違いがあり、使用する塗料などの詳細も明らかにされてなかったので、客観的に比較することが難しく、各社から見積は出ていたものの結論に至りませんでした。

私が今回、中性化によるコンクリートの劣化を防止する方法として採用した基本的な考え方は、中性化の原因となる二酸化炭素を遮断する(断気性能)と鉄筋の錆の原因となる水の進入を防ぐ(防水性能)を持った物質でコンクリート表面を覆うということで、具体的には、カチオンモルタルを2〜3ミリ程度薄塗りし、その上にウレタン系塗料+光触媒を塗装する方法です。再アルカリ化も検討しましたが、コストの問題や逆効果を招く恐れがあることなどから、採用しませんでした。

もうひとつの難題は前回吹き付けたパーマシールドの影響が分からなかったことです。パーマシールドが残った状態の上からカチオンモルタルを塗った場合にしっかりと付着するだろうかということです。そこで、パーマシールドの付着力試験を行ないました。


<付着力試験>
横軸には下地処理方法3段階。1.下地処理なし。2.目荒らし。3.コンクリート表面削り。
縦軸には薄塗りモルタルの工法3段階。1.カチオンモルタル。2.特殊プライマー+カチオンモルタル。
3.特殊プライマー+ポリマーセメントモルタル。
上記のマトリックスとし、それぞれについて付着力を計測する。
DSC_2086_01.JPG

貼付けたナットを計測器で引っぱりはがれた時の付着力を計測する。
DSC_2364_01.JPG

この例のようにモルタルがはがれているのはモルタル強度よりコンクリート表面の付着力が弱いということになる。
DSC_2346_01.JPG

結果は左上の下地処理なしとカチオンモルタルの組み合わせが最も付着力が強かった。
DSC_2359_01.JPG

次に行なったのは鉄筋部のコア抜きです。通常のコア抜きは数カ所行なっていて中性化の進行状況は把握していたのですが、肝心の鉄筋の錆がどの程度すすんでいるか直接目で確認することは建物を診断する上で大変重要と考えたからです。

亀裂があり、最も条件の悪い場所を選びコア抜きを行なう。
紫色はコンクリートがアルカリ性であることを示している。鉄筋は少し錆が出ていてこれ以上錆を進行させてはいけないという状況であることがわかった。
DSC_2158_01.JPG

中性化の進行は20ミリ。
DSC_2150_01.JPG

抜いたコア。紫色の部分はアルカリ性が残っている。色がついていない部分は中性化している。
DSC_2155_01.JPG

<パーマシールドの剥離試験>
2種類の剥離材を使ってパーマシールドの剥離試験を行った。結果は、表面のパーマシールドはある程度除去できたが、コンクリートに浸透している部分は除去することができなかった。

<総合評価>
10年前の試験結果と比較すると、前回吹き付けたパーマシールドは中性化の進行を防ぐことにはほとんど役に立たなかったが、防水性能はあった。
原因として考えられることは、コンクリート表面には無数のピンホールがあるので、パーマシールドを吹き付けた際に連続膜を形成できなかったことが考えられる。塗膜にミクロン単位の孔が空いていて水は通さなくても、気体を通してしまう状態であったのではないだろうか。

そこで、今回はコンクリート表面にカチオンモルタルを薄塗りして平滑な下地をつくることにより、連続膜を形成しやすくするだけでなく、カチオンモルタルがコンクリートにアルカリ性を付与することも期待できると考えた。

次回は改修方法についてどのように住民の合意形成を計ったかについてレポートします。




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